研究内容 / Research

 分子配向制御 / Molecular Alignment Control
 新規材料開発/Design & Synthesis for Novel Materials
 薄膜作製技術の開発/Development of Preparation Method

分子配向制御/Molecular Alignment Control
有機半導体であるπ共役系分子の持つ電気・光学特性は二重結合のπ電子に由来します。一般に有機半導体材料はベンゼンなどの二重結合を有するユニットが連なった構造となっています。 従って、π共役系が一次元(鎖状)に連なった導電性高分子は特に、その電気・光学特性もまた二重結合の一次元(鎖状)的分布が極めて強調された材料となります。 これまで、こうした電気・光学特性の一次元性は、導電性高分子の薄膜を形成するたびに、その性能がバラつく原因とみなされ、 一次元性が隠れるようになるべく等方的な薄膜を形成することが求められてきました。 ところが、昨今では一次元性(異方性)があっても、より高性能・高機能な電気・光学特性が発現できるような電子デバイスが求められています。 こうした状況において、我々は導電性高分子のもつ電気・光学特性の一次元性(異方性)をより積極的に素子機能に適用する研究開発を行っています。

J. Mater. Chem. C., 7(2019)13323
 
浮遊薄膜転写法による高分子配向制御
Floating-Film Transfer Method
親水液面上に疎水性導電性高分子薄膜を形成する成膜技術を開発しました。 本手法では、液面上での薄膜形成過程おいて、溶媒蒸発・圧縮・薄膜形成が同時に起こることにより、 薄膜内部において導電性高分子の主鎖が一軸に配向していることがわかりました。
また本手法では薄膜を何層も重ねることができ、配向薄膜の積層が可能でOLED・OTFTなど各種有機デバイスへの異方性付加に成功しました。

(本学生命体工学研究科との共同成果)
Appl. Phys. Express, 5(2012)092101
Adv. Mater. Interfaces, 5(2018)1700875
Appl. Phys. Lett., 112(2018)123301
ACS Appl. Mater. Interfaces, 11(2019)28088
Org. Electronics, 81(2020)105687
 
摩擦転写法による高分子配向制御
Friction-Transfer Technique
摩擦転写法は固体高分子ブロックを固体基板にこすりつけることで、基板に高分子薄膜を形成する手法です。 本手法でOLED・OTFT材料である機能性高分子を成膜すると薄膜内で高分子の主鎖だけでなく、その分子面の配向も制御できることを明らかにしました。 機能性高分子を3次元的に高度に配向制御することに成功し、機能性高分子の結晶構造解析や、異方性を付加したOLEDやOTFTの開発に成功しました。

(産業技術総合研究所、神戸大学との共同成果)
Macromolecules, 36 (2003) 5252
Appl. Phys. Lett., 84 (2004) 4608
J. Phys. Chem. B., 111 (2007) 4349
ACS Appl. Mater. Interfaces, 12(2020)11876
Scientific Reports. 10(2020)20020


新規材料開発/Design & Synthesis for Novel Materials
新しい有機半導体の研究開発は、多くの研究機関によって為されています。 一般に有機半導体材料は大気中の酸素や水分といった活性種との相互作用により大気中では急速に本来の半導体性能が劣化します。 当研究室ではこの大気中での半導体性能の安定性を克服した新規な材料の開発を学内外の研究機関と連携して行っています。
 
大気安定なn型有機半導体低分子材料の開発
Air-Stable n-type Oragnic Semiconductor
大気中では酸素・水分の影響により不安定なn型有機半導体材料について、新たに分子設計を行い大気中でも安定に半導体特性を示す低分子材料を開発しました。
開発した材料は非常に簡易な合成反応により創成でき、作製した有機トランジスタは大気中保管・大気中駆動により0.1cm2/Vsec程度の電子移動度を1年間以上示しました。 有機半導体材料では開発事例の少ない大気安定なn型半導体材料の開発に成功しました。

(本学応用化学科、生命体工学研究科との共同成果)
Appl. Phys. Express, 2(2009)101502
ACS Appl. Mater. Interfaces, 6(2014)3847


薄膜作製技術の開発/Development of Preparation Method
有機半導体分子の薄膜作製技術は、対象となる有機半導体の分子構造により様々な手法が用いられます。 溶媒に可溶性のある有機半導体については、インクジェットなどの印刷プロセス・溶液プロセスによって成膜されます。 我々は溶液プロセスの様々な問題点を解決をするために、新たな薄膜作製技術の開発を行っています。
 
懸濁液プロセスの開発
Development of Suspension-Process
有機デバイスの高性能化には有機半導体材料の分子間相互作用を強める必要があります。これはすなわち溶け難くすることです。 高性能な有機半導体材料は溶解性に乏しく、100℃以上に加熱した溶液を用いて成膜されている現状です。 本研究室では有機半導体材料が完全に溶解していない懸濁液状態での成膜技術の研究開発をしています。

(本学生命体工学研究科との共同成果)
Appl. Phys. Lett., 101(2012)193305
Materials, 12(2019)3643
 
環境調和型溶液プロセスの開発
Environment-Friendly Solution-Process
溶液プロセスによる有機デバイスの作製には、専らジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒が使用されていますが、 毒性・環境負荷などが極めて高く、ハロゲン系溶媒を使わないプロセス開発が求められています。 本研究室ではグリーン代替溶媒として使用されているシクロペンチルメチルエーテル(CPME)に注目しました。 水やアルコールなどとともに低環境負荷なプロセス溶媒のみを用いた溶液プロセスで、フルオレン系高分子を用いたOLEDの作製に成功しました。

(本学太陽光エネルギー変換研究センターとの共同成果)